Some Day ~夢に向かって~
次の日の朝、私は寝不足で眠い目をこすりながら、教室に入った。

「おはよう、どうしたの、眠そうじゃん。」

「おはよう。」

「なに、勉強頑張っちゃった?」

すぐに声を掛けてくれる由夏に、首を振る私。

「ううん、なんか寝付けなくて。」

「そっか、そういうこともあるよね。」

由夏にはそう言って誤魔化しちゃったけど、寝不足なのには、ちゃんと理由がある。

昨日、家に帰って、お風呂に入った後、部屋に戻った私は、携帯がなにやら光ってるのに気が付いた。

(えっ?ひょっとして・・・。)

慌てて携帯を開くと、やっぱり先輩からのメ-ルが入ってる。

『お疲れさん、今着きました。なんか無理にメアド聞いちゃってゴメンな。でもせっかく教えてもらったから、とりあえずメ-ルしてみました。じゃ、おやすみ、また明日。』

時間を見ると、メ-ル来てからもう40分以上経ってる。マズい、私は急いで返信にかかる。

『ごめんなさい、お風呂入ってたんで、返信遅れました。全然そんなことありません、早速メ-ルいただいて、とても嬉しいです。ありがとうございました、おやすみなさい。』

とりあえず返信して、ホッとしていると、すぐまた着信音が鳴る。

『あっ、起きてたんだ、返信ありがとう。こんな時間に迷惑だとは思ったんだけどさ。』

『全然大丈夫です。』

こうして始まったメ-ルのやり取り、何か特別なことを話したわけじゃない、他愛のない会話だったんだけど、止めるきっかけって意外と難しくって。

いつの間にか携帯握りしめたまま寝ちゃってて、気が付いたら朝になってた。

(そう言えば、先輩まだ来てないけど、ひょっとして寝坊しちゃったのかな?)

ふとそんな思いがよぎって、心配してると、チャイムの鳴る寸前に先輩が滑り込んで来た。

「おはようございます。」

「おはよう。」

ホッとしながら声を掛けると、先輩も笑顔で挨拶を返してくれたが、席に着くなり、私の方に顔を寄せて来た。

「ゴメンな、夕べは遅くまで付き合わせて。いつの間にか寝ちまってたよ。」

「先輩もですか?私もです。」

なんてコチョコチョ話をしていると、先生が入って来た。

日直の号令のあと、山上先生が話を始めようとした時、1人の女子が手を挙げた。

「先生。」

「なんだ?」

「新学期始まったのに、なんで席替えしないんですか?」

「席替え?」

「だって普通、学期変わったら席替えしますよね。」

立ち上がった女子は、ちょっと突っかかるような口調で先生に言う。

「そうよ、普通するよね。」

「うん。」

すると、何人かの女子が賛同の声を上げる。

「そうか、席替えか・・・。」

先生は意外そうな声を出す。

「必要か、今更?」

「今更ってどういうことですか?」

「高3の2学期にもなって、もういいんじゃないかと思ってたんだが・・・。」

「そんなことありません!」

勢い込んで答えるその子に、先生はややたじろいだようだったが

「わかった、まぁじゃ、そのうちにな。」

と適当にお茶を濁すと、そのままSHRに入って行ってしまった。
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