Some Day ~夢に向かって~
「必死だね。」

またまた昼休みの屋上、由夏は楽しそうに話し出す。

「誰が?」

「悠のライバル達。」

「私の?」

「そう、悠と先輩の大接近に焦りの色が隠せません、みなさん。」

ニヤニヤしている由夏に、私は首をかしげる。

「どういうこと?」

「悠は本当に自覚ないの?」

逆に呆れたように問い返してくる由夏。

自覚が・・・全くないわけではない。確かにケ-番も教え合ったし、昨日は夜遅くまでメ-ルをしてたのは事実。それに塾の帰り、一緒に帰ってもいる。

でも休み時間、先輩は相変わらず、他の女子に囲まれてるし、朝少し話はしたけど、それっきり私なんてお呼びでない状況、だよ。

「朝、何を話してたかは知らないけど、顔を寄せてヒソヒソ楽しそうに話してる姿なんて、完全にもうカレカノにしか見えなかったし。」

「えっ?」

「塾の帰り、いつも一緒に帰ってるのだって、もう有名だよ。」

由夏の言葉に、思わず真っ赤になる私。

「で、でも楽しそうにって言われても、ちょっと話しただけだし。」

「動揺してなかったよね、もう。」

「はい?」

「一週間前に先輩に頼まれて、教科書見せた時は、ここでもう無理とか助けてとか騒いでた人が、今朝はあんだけ先輩に顔寄せられても、普通に話してたじゃん。」

確かに・・・短い時間だったけど、先輩にあんなに顔寄せられて、でもそんなにドギマギしなかったな。

「先輩に対する免疫が多少出来たのは確か・・・かも。」

私の答えに、我が意を得たりとばかりに由夏は大きくうなずく。

「でしょ。どう見ても先輩と悠の距離は縮まる一方。だから休み時間は悠を先輩に近づけまいと共同でブロック張ってるし、席替えで先輩と悠を引き離そうとしてる。」

「それであの子達、席替えを?」

「当たり前じゃん、そんなことも気がつかなかったの?」

「うん・・・。」

私の返事に呆れたようにため息をつく由夏。

「鈍感もそこまで行くと、感心するしかないよ。とにかく、みんなは攻勢掛けて来るよ、ドンドン。卒業まであと半年しかないし、悠の言う通り、受験も控えてるんだから。今はリ-ドしてても、油断は絶対禁物。」

由夏が応援してくれるのは嬉しいけど、私は曖昧にうなずくことしか出来なかった。

だって、先輩の本当の気持ちが、やっぱり私にはわからなかったから。
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