Some Day ~夢に向かって~
昼休み、お弁当を持って、いつものように屋上に上がって来た私と由夏。


「それにしてもさぁ。」


由夏は言う。


「沖田くんはどこから情報仕入れたのか知らないけど、どう考えても、やっぱり嘘っぽいよね。」


あれから、どこからか戻って来た沖田くんは先輩の熱発は本当だと私達に告げた。彼は学校帰りに、お見舞いに行こうと塚原くんと相談してたけど、由夏はまだ信じてないようだった。


「うん・・・。」


私はと言うと、複雑な気持ちだ。先輩はそんな人じゃないって思いたい反面、昨日のことがあるから。今までみたいに、真っ直ぐに、先輩を信じることはやっぱり出来ない。


あれ?そう言えばさ・・・。


「ねぇ、由夏と塚原くんって、どういう関係なの?」


今まで2人が話してる姿を、ほとんど見たこともなかった気がするけど、沖田くんのことは「沖田くん」って呼んでるのに、塚原くんには「聡志」って言ってたよね。


塚原くんも「由夏」って呼んでた、昨日も今日も。名前で呼び捨てにされて、2人とも平気って・・・。


「言ってなかった、よね・・・。」


由夏はちょっと舌を出す。


「実は聡志とは、幼馴染なんだ。幼稚園から小学校卒業まで、ずっと一緒だった。」


「そうなの?」


これはビックリだ。


「家も近所だったし、3年生くらいまでは、一緒に学校行ってたかな。そのうちお互い照れ臭くなって、止めちゃったけど。それでもクラスは一緒だったから。」


「へぇ、知らなかった。だって全然親しそうじゃなかったじゃん。」


「うん、小学校卒業と同時に、聡志は親の転勤で引っ越しちゃって、それっきりだったから。だから、高校入って、再会した時はビックリしたよ。まさか帰って来てるなんて思わなかったから。」


「じゃ、由夏達の方が、よっぽど運命じゃない。」


「ぜ~んぜん。私達、そんなケータイ小説の世界のような関係じゃないから。だから再会しても『よう』『久しぶり』、それだけ。家もあんまり近所じゃなくなったし、クラスも去年までは違ってたから。別に避け合ってたわけじゃないけど、ホントにその程度の間柄なんだよ。」


「フーン。」


「だいたい私の理想のタイプは松本先輩だよ。聡志とは全然違うじゃん。」


「そっか。」


そう言うと私達は、笑った。


「水木さん。」


すると、私を呼ぶ声がする。振り向くと先輩の取り巻き女子の1人、桜井加奈さんが立っていた。


「なに?」


良好な関係とは、お世辞にも言えない人の登場に、私達は警戒する。


「1つあなたに言っときたいことがある。」


「・・・。」


「先輩、サボってないから。」


「えっ?」


「先輩はちゃんと、自分のやるべき事をやってたから。」


彼女の言ってることがよく分からなくて、私達は彼女を見つめてしまう。


「サボってたのは私達だけ。やる気なくて、先輩を隠れ蓑にしてた。先輩と一緒なら、誰にも文句言われないと思ってたから。」


「それって・・・。」


「嘘じゃないよ、嘘だと思ったら、ウチのチ-ムの他の人に聞いてごらん。」


「・・・。」


「別にあなたと先輩の仲が悪くなったって、私達には関係ない。むしろ喜ばしいことだけど、でも先輩を悪く思われるのは、私耐えられないから。それだけ、じゃ。」


言い終わると、桜井さんは私達に背を向けて、サッサと行ってしまった。


「悠・・・。」


「うん・・・。」


あまりに意外な彼女の言葉に、私達は顔を見合わせるだけだった・・・。
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