Some Day ~夢に向かって~
それからの私は、また家と学校、予備校とを往復するだけの、受験生の生活に戻った。


先輩との関係も、予備校の帰りは一緒に帰るけど、特別のことを話すわけでもなく、メ-ルも電話もほとんどしなくなり、なにか1ヵ月前に戻ってしまった感じだった。


先輩から告白してもらえるんじゃないか、もしそれが自分の勘違いだったとしても、その時は自分の方から想いを告げよう、なんて盛り上がっていたことが、まるで嘘のように思える。


それでいいのか、と思う気持ちはあるけど、1度狂ってしまった歯車を、元に戻すことはやはり難しいものなんだな、そう実感しながら、私は目の前の定期試験対策、更にはその合間の受験勉強に追われていた。


そして私達受験生にとって、正直面倒だった定期試験が終わった時、文化祭から、もう2週間が過ぎていた。


さすがに今日は、一緒にご飯食べて行こうよ、と由夏と話していた私に沖田くんが声を掛けてきた。


「ちょっといいかな?」


「なに?」


問いかける私に、沖田くんは黙って扉の外を指差す。そこには・・・


「唯ちゃん・・・。」


そこにはあの時とは、全く違った雰囲気の唯ちゃんが立っていた。


「君と話したいそうだ、聞いてあげてくれないかな。」


その沖田くんの言葉に、私はチラッと隣の席にいる先輩の顔を見るが、先輩は気づかぬ風で他の子達と話している。


「悠。」


「大丈夫、行ってくるよ。」


心配そうな由夏に笑顔を向けると、私は教室を出る。そんな私にちょこんと一礼すると、唯ちゃんは私を先導するように歩き出した。
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