Some Day ~夢に向かって~
「人を好きになるって言うことが、どういうことか、やっとわかったから、私は加瀬くんの気持ちがわかった。そして嬉しいと思った。だけど・・・私はやっぱり、加瀬くんに『ごめんなさい』しか言えない。難しいんだね、恋愛って。」


「・・・。」


「加奈ちゃん、ゴメンね。改めて言うけど私、先輩のこと好きなんだ。」


「前から知ってるよ、そんなこと・・・。」


複雑そうな表情で答える加奈ちゃん。


「だから、先輩のこと誰にも渡したくない。せっかく仲良くなったけど、例え加奈ちゃんと絶交することになっちゃっても。」


「・・・。」


「でも。」


「でも?」


「これも昨日わかっちゃったことなんだけど、先輩の心の中には別の人がいる。」


「えっ?」


「どうしてわかったの?」


驚いて聞いて来る2人。


「詳しくは言いたくないけど、間違いないんだ。でもその人には、ちゃんと恋人がいて、だから先輩がもし私に興味を持ってくれてたとしても、それはあくまでその人の代わりとしてって言うことになる。」


「・・・。」


「人間って贅沢だよね。遠くで見つめてればいいって、ついこないだまで思ってたくせに、もう2番目じゃ嫌なんだもん。」


「悠ちゃん・・・。」


「やっぱり代打じゃなくって、先発で出たいよ。だけど、私にはレギュラ-になる力がなかった。悔しいけど・・・諦めます。」


「加瀬くんは断って、先輩の事は諦めて・・・それで悠はどうするの?」


「勉強します。」


由夏の問いに、私はキッパリと答える。


「今は受験が第一、そう決めてたはずなのに、思わぬ雑念が入っちゃった。でもいい経験をさせてもらった、人を好きになることの大切さを教えてもらった。ちょっと人より遅かったかもしれないけど。だから、その経験を生かして、次のステップに進む為にも、勉強します。」


そう言うと私は笑顔になった。でも・・・


「それでいいの?」


「えっ?」


「それって、ちょっと違うと思うんだけど。」


「加奈ちゃん・・・。」


加奈ちゃんは真っすぐ私を見て言う。


「人を好きになるってことがどういうことか気づいたのに、先輩の事、ホントに好きだって気づいたのに、諦めちゃうっておかしくない?」


「だって私、スペアは嫌だもん。」


「だったら、まず1番目になる為に努力をすべきなんじゃない?そんな恋人がいる人に怖気づいて、諦めちゃうって、悠ちゃん絶対おかしいよ。」


「加奈ちゃん・・・。」


「私も加奈に賛成。最初は悠から恋愛の講釈を聞けるなんて、ってちょっと感動してたんだけど、結論支離滅裂。」


2人からの手厳しい言葉に、私はグッと詰まるけど、ようやく反論の言葉を口にする。


「だって今はそんな時間ないじゃん。」


「それって結局逃げてるだけだよ。」


いつにない加奈ちゃんの厳しい口調と表情に、私はそれ以上、なにも言えなくなってしまった・・・。
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