Some Day ~夢に向かって~
(あ~ぁ、行っちまったよ。)
昼休み、俺が声を掛けようとする前に、友達から声が掛かると、水木はそそくさと、そっちの方に行ってしまった。
(やっぱり、迷惑がられてるよなぁ、明らかに。)
教科書がないなんて嘘、わざと持って来なかったんだ。なんでそんなことしたのかって?そりゃ、隣の水木に声掛けるきっかけを作る為さ。
教科書を見せてくれって頼んで、拒否られるとは思わなかったけど、その後は、話し掛けても、まともな返事もあまりしてもらえなかったし、こっちの方をほとんど見てもくれなかった。
まぁ水木に限らず、卒業まであと半年って時期に、いきなり1つ年上の奴が現れて、よろしくって言われたって、戸惑うのも無理ないんだろうけど。
「先輩。」
そんなことを考えていると、俺に声を掛けてくれる奴がいる。
「メシ行きましょうよ。」
やっぱり持つべきものは後輩だ。
「ああ、気遣わせて悪いな。」
「何言ってるんですか。」
「他の連中も待ってます、行きましょう。」
うなずくと俺は、可愛い後輩2人と学食に向かった。
学食に入ると
「白鳥センパ~イ。」
「こっち、こっち。」
と俺達に向かって手を振ってる奴らがいる。
「おぅ。」
総勢5名、全員男というのが悲しいが、横にいる沖田や塚原と同様、俺達の最後の夏を共に戦い、俺らが去った後の明協野球部をついこの間まで率いてくれてた後輩達だ。
「先輩、お帰りなさい。」
全員を代表して言ってくれたのは、こいつらの代のキャプテンの神尚人。
「ただいま、お前達もお疲れさん。」
「はい。」
それから俺達は久々に話に花を咲かせた。5期連続甲子園出場を果たした俺達が抜けた後の1年、野球部を最高学年として引っ張ってくれた後輩達だが、健闘及ばず甲子園には手が届かなかった。
連続出場を果たした俺達と比較されて、きっと苦しい思いをして来たと思うが、それにめげずに、精一杯戦い抜いてくれたこいつらを、先輩の1人として、俺は労った。
「そう言えば、相変わらずモテてるみたいですね、先輩。」
「なんだよ、いきなり。」
「俺達なんか急に、朝から女子に囲まれて、何かと思えば、みんな先輩のことを聞いて来るんですからね、参りましたよ。」
「そうなのか?」
他人事のような返事をする俺。
「そんな雰囲気はかけらも感じないけどな。こんな時期に一留の奴がクラスに入って来て、めんどくせぇとしか思われてないような気がするけど。だって話し掛けてくれんの、結局はソウとツカだけだもんな。」
「遠慮してんですよ。甲子園のヒ-ロ-に。」
「そっか、みんなまだ知らねぇんだな。俺の肩、ポンコツになっちまって、もう投げられねぇんだって。」
固まる後輩達に、俺は続ける。
「俺はもう甲子園のヒ-ロ-でもなんでもない。だから勉強しねぇとな。」
「勉強、ですか?」
「勉強しなきゃ、当たり前だけど大学入れないだろ。だから女にうつつ抜かしてる暇なんかないんだよ、今は」
そう言うと俺は後輩達に笑って見せる。自分の気持ちに嘘を付きながら。
昼休み、俺が声を掛けようとする前に、友達から声が掛かると、水木はそそくさと、そっちの方に行ってしまった。
(やっぱり、迷惑がられてるよなぁ、明らかに。)
教科書がないなんて嘘、わざと持って来なかったんだ。なんでそんなことしたのかって?そりゃ、隣の水木に声掛けるきっかけを作る為さ。
教科書を見せてくれって頼んで、拒否られるとは思わなかったけど、その後は、話し掛けても、まともな返事もあまりしてもらえなかったし、こっちの方をほとんど見てもくれなかった。
まぁ水木に限らず、卒業まであと半年って時期に、いきなり1つ年上の奴が現れて、よろしくって言われたって、戸惑うのも無理ないんだろうけど。
「先輩。」
そんなことを考えていると、俺に声を掛けてくれる奴がいる。
「メシ行きましょうよ。」
やっぱり持つべきものは後輩だ。
「ああ、気遣わせて悪いな。」
「何言ってるんですか。」
「他の連中も待ってます、行きましょう。」
うなずくと俺は、可愛い後輩2人と学食に向かった。
学食に入ると
「白鳥センパ~イ。」
「こっち、こっち。」
と俺達に向かって手を振ってる奴らがいる。
「おぅ。」
総勢5名、全員男というのが悲しいが、横にいる沖田や塚原と同様、俺達の最後の夏を共に戦い、俺らが去った後の明協野球部をついこの間まで率いてくれてた後輩達だ。
「先輩、お帰りなさい。」
全員を代表して言ってくれたのは、こいつらの代のキャプテンの神尚人。
「ただいま、お前達もお疲れさん。」
「はい。」
それから俺達は久々に話に花を咲かせた。5期連続甲子園出場を果たした俺達が抜けた後の1年、野球部を最高学年として引っ張ってくれた後輩達だが、健闘及ばず甲子園には手が届かなかった。
連続出場を果たした俺達と比較されて、きっと苦しい思いをして来たと思うが、それにめげずに、精一杯戦い抜いてくれたこいつらを、先輩の1人として、俺は労った。
「そう言えば、相変わらずモテてるみたいですね、先輩。」
「なんだよ、いきなり。」
「俺達なんか急に、朝から女子に囲まれて、何かと思えば、みんな先輩のことを聞いて来るんですからね、参りましたよ。」
「そうなのか?」
他人事のような返事をする俺。
「そんな雰囲気はかけらも感じないけどな。こんな時期に一留の奴がクラスに入って来て、めんどくせぇとしか思われてないような気がするけど。だって話し掛けてくれんの、結局はソウとツカだけだもんな。」
「遠慮してんですよ。甲子園のヒ-ロ-に。」
「そっか、みんなまだ知らねぇんだな。俺の肩、ポンコツになっちまって、もう投げられねぇんだって。」
固まる後輩達に、俺は続ける。
「俺はもう甲子園のヒ-ロ-でもなんでもない。だから勉強しねぇとな。」
「勉強、ですか?」
「勉強しなきゃ、当たり前だけど大学入れないだろ。だから女にうつつ抜かしてる暇なんかないんだよ、今は」
そう言うと俺は後輩達に笑って見せる。自分の気持ちに嘘を付きながら。