地下室のフィアンセ ~秘密を愛しすぎた獣~

「ねぇ、ピエール。なぜ私のことをリサと呼ぶの? あなたは私の本当の名前を知っているの?」


女は凄まじい倦怠感と憎悪の中、なぜか笑顔を浮かべて男に尋ねた。


「知っているよ。もちろん何度も呼んだ名前だからね……

でも君はリサでいいんだ。君は生まれ変わったんだから。

新しい自分として。もうすべて忘れてしまってもいいんだ。

君は僕と一緒にこれからずっと幸せになるべきなんだ」


そう言って男はマジックのように背中から花束を取り出した。


美しくて香り経つ純粋な花達。


男の女に対する愛はおそらくここにつまっているのだろう。


しかし、


『愛…………』


女にとってピエールと名乗る男の愛情はどうしようもなく不快なものでしかなかった。
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