幼馴染みと、恋とか愛とか
小さかった頃とは違うんだから…と言えば、彼は昔のままの様な笑顔で「そうか?」と訊いてくる。


「朝から甘そうなもん食ってたのに?」


ハチミツたっぷりのフレンチトーストを齧ってたのを思い出し、あれを引き合いに出されたと思った。


「あれは休みだったし……いいじゃない別に、日曜日くらい甘い物を食べたって」


紫苑には関係ないでしょ、という態度を見せると、彼はクスクスと笑いを含んだ。


「そうだな、じゃあ行ってくるから」


後は宜しくと頭をポンポンと叩かれ、やっぱり犬扱いだと憤慨した。

それでも。



「お気を付けて」


一応秘書らしく声をかけてみる。
紫苑が社長だと思うからその辺は考慮した。


彼はその言葉に口角を上げてドアの外へと出て行く。

社長なのに自ら外回りをするなんて変な人…と思いながら見送り、座っていたデスクに近付いてデイスプレーを眺めたんだけど__



「何よ、これ」


超カンタンな表計算が途中で止められてあった。
私でなくても誰にでも出来そうな感じで、唖然としたままパソコンに向かい合う。


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