幼馴染みと、恋とか愛とか
「宜しくお願い致しますって言ったろ」


自分はこれから制作部のエンジニアと外回りへ行くと伝え、やりかけの仕事を頼むと言って部屋から出ようとする。



「紫苑!」


幾ら何でも横暴な…と抗議の声を出そうとしたのに。


「待て、黙れ!」


いきなり怒鳴られてしまい口籠る。
ドアの前で振り返った紫苑は少し厳しい顔つきでいて、「俺のことを呼び捨てるな」と言い張った。


「これでもオフィスでは社長なんだ。幼馴染み感覚で呼ばれたら困るだろ」


自分は私のことを「萌音」と呼び捨てにしてるのに!?


納得出来ないでいると、彼は立ち竦んでる私の近くに寄ってきた。


「萌音に出来ないような難しい仕事は任せない。ただ他の連中にはまだ教えられない機密内容もあるから頼む」


こそっと耳打ちしてくる声は幼い頃に聞いてきたものとは違う。明らかに大人の男性の声で、少しドキッと胸が弾んだ。


「頑張ったら美味いデザート買ってきてやるから」


ワンコにおやつでもあげる様な雰囲気で微笑み、私はパシッと彼のことを引っ叩いた。


「いらないよ。そんなの」


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