幼馴染みと、恋とか愛とか
「ねえちょっと紫苑、聞いてる!?」


いきなり十年以上ぶりに部屋へ来たかと思えば、相変わらず子供みたいなことを延々と喋る萌音に呆れる。

声を煩わしく感じながら(こいつはもう直ぐ三十になるんじゃないか!?)と頭の中で疑問を投げ掛け、自分が三十二になってるんだから間違いなくもう直ぐ三十だと確信を深めていた。


(それなのに無職!?)


話を聞いてこいつは世間を舐めてると思った。
そもそも大学を卒業した後、就職した銀行を半年で辞めた辺りから、何やってんだ…と呆れたんだが。


萌音は弟の蓮也が大学を卒業したにも関わらず、次は専門学校へ行くことに憤慨しているようだった。

自分は安穏と派遣社員としてしか働いてこなかったことを棚に上げ、弟の未来を潰そうと考えるとは何事だろうか。

やっぱりこいつは世間を舐めてる…と思ったが、それを言ったところで心根が変わる訳でもないし…と悟った。



「ああもう、分かった分かった」


頼むから寝かせてくれ〜と思い、さっさと出てけと手を振る。
萌音は俺の気持ちなど振り返ることもなく、「恩にきるわ!」と喜んで部屋を出て行った。


< 35 / 221 >

この作品をシェア

pagetop