幼馴染みと、恋とか愛とか
(全く昔から進歩のない奴だ)


萌音が部屋を出た後、俺はもう一度布団の中に潜り込んだ。

頭では「派遣社員としては優秀みたいよ」と話していた母の言葉を思い出し、優秀な奴がクビを切られるのか!?と思わないではなかったが。


(まあな、もう三十にもなるんだし、無理もねえか)


要するにトウが立ったんだよな…と考え、萌音は結婚する気はないのか?と疑問を覚える。

それについては自分も人のことを言えた義理ではないが、男の三十代と女の三十路とでは違いもあるんじゃないのかと思えてしまい……。


(分かったとは言ったが、どうするかな)


寝惚けながら夢現に思考してみる。
微睡みながら見た夢の中では、萌音がさっきの様に手を組み合わせて「お願い」と俺に頼み込んでいた。


_______________


ククク…と笑いを噛みしめる俺を振り返り、運転席でハンドルを握る首藤がポカンする。
我が社でも優れたアイデアを捻り出すエンジニアの首藤を、俺はいつも外回りに同行させていた。


「何ですか。思い出し笑い?」


ハンドルをカーブに合わせて切りながら首藤が顔色を窺う。

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