幼馴染みと、恋とか愛とか
くそ真面目な顔つきは頬に赤みが差していて、照れるくらいなら最初から悪い冗談を言うのは止せば?と言いたくなる。



「御免被ります」


ランチケースの御飯を一口頬張る。
それを左右に移動させながら、渋い表情に変わっていく紫苑の顔を見ていた。


「何でだ」


私と同じように、お弁当の中身を口に入れる紫苑。

それに答える必要があるだろうか…と思いつつ、どうしてこの前といい今日といい、紫苑はこんな発言を繰り返すんだろうか…と考えていた。



「萌音」


痺れを切らすように名前を呼ぶ。
それでも私が何も言わないから、とうとう紫苑は箸を置いた。


「どうして」


私は空になってしまったランチケースの蓋を閉めながらイラッとした。
あんまり馬鹿なこと言うと、お弁当作りをやめるよ?と脅したくなる。


「血迷ってるの?」


ランチケースを片付ける手を休めずに問うと、紫苑は真面目な顔のまま「まさか」と言い返してくる。


「だったらどうして」


私達は幼馴染みで、まるで兄妹のように育ってきた間柄なのに。

それなのに付き合ったり、紫苑の女になったり……出来る筈がないだろうに。



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