幼馴染みと、恋とか愛とか
「どうしてかは俺にも分からねえんだけど」


「はあ?!」


「これ食ってたら言いたくなった」


箸の先で弁当を差し、私はそれを聞いて目を点にする。


「何それ。気紛れ?」


思いっきり迷惑そうな表情をしてやった。
紫苑はそれには答えず、私が作ったミートボールを口に放り込む。
そして、モグモグと噛み締め、喉仏を上下させて飲み込んだ。



「………悔しいけど美味い」


悔しいは余計でしょ…と言いたくなり、冷めた目線を送り続ける。


「このミートボールだけじゃなくピーマンのじゃこ炒めも美味かった。煮玉子も好きだし、きゅうりの漬物もピリ辛で好物だ」


ひょっとして自分の親に訊いたんじゃないか?と勘繰る紫苑に呆れ、今度は私が「まさか」と言う。


「そんなことしないよ。今日のお弁当は私の好きなおかずを詰めただけ」


それがたまたま紫苑の口に合っただけだと言うと、神妙な顔つきに変わり……。


「やっぱり俺の女になれよ、萌音」


だーかーらー。


「御免被ります。社長」


「こういう時ばかり社長って呼ぶな」


「あら、でも社長でしょ」


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