溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
タクシーに乗り込む修也に「じゃあ、またな」と素っ気なく声をかける。

「ああ」

「お兄ちゃん、おやすみ」

楓は少し寂しげな顔で修也から手を振る。

「遥と楓が一緒に帰るっていうのも変な感じだな。おやすみ」

修也が苦笑いしながらそう言うと、タクシーは彼の宿泊先のホテルに向けて走り去った。

「さあて、俺達は歩いて帰るか?月が綺麗だぞ」

楓の手に指を絡めると、彼女は空を見上げた。

パアッと明るくなるその顔。

「本当だ。綺麗だねえ。歩いて帰ろう。なんかそうしたい気分」

フフッと笑う彼女にそっと口付ける。

修也が楓に触れる度にずっとそうしたくて堪らなかった。

「ちょ……遥。誰かに見られるよ」

楓は慌てて周りを確認する。

「修也に見せつけてやればよかった」

ポツリと呟けば、彼女は俺を見た。

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