溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
今にも兄に電話しそうな彼の手を慌てて止める。

「待って!お兄ちゃんの邪魔はしたくない」

ただでさえ入院して心配をかけたのだ。

遥が兄に『俺がついてるから』とうまく取りなしてくれたから帰国はしなかったけど、次何か起これば絶対に兄は戻ってくる。

「だったら、どうすればいいかわかるだろ?俺だって、修也の研究のスポンサーだし、あいつの邪魔はしたくない」

遥は今度は穏やかな声で私を説き伏せようとする。

相手は私より一枚も二枚も上手。

でも、彼に従い、ここに一緒に住むなんて出来ない。

「……遥にもうこれ以上迷惑はかけられないよ」

私の言い訳に彼は眉根を寄せた。

「迷惑?」

「栄養失調で倒れていろいろと面倒かけちゃったから」

嘘は言ってない。

それも私の本心だ。

救急車を呼んで私に付き添ってくれたし、仕事も忙しいのに毎日見舞いに来てくれた。
< 59 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop