わたしと専務のナイショの話
 


 車は二台だったが、なんとなく別れがたく。

 京平が、
「追走するから、前を走れ」
と言ってくれたので、素直に、ついてきてもらった。

 家に帰ると、母親は風呂に入っていて、父親は二階でテレビを見ているようだった。

「お茶でも淹れますね」
と言って、リビングから続きになっているキッチンにのぞみが行こうとすると、

「のぞみ」
と京平が手をつかんできた。

 そのまま、のぞみを抱き寄せる。

 しばらく、黙ってのぞみを抱いていた京平が、
「よかった。
 間に合って――」
と溜息をとともに言ってきた。

 落ち着き払っているように見えていたが、そういうわけでもなかったのだと、そのとき知った。

 専務……とのぞみは目を閉じ、その胸に顔をうずめる。

「私、よくわかりませんでした。
 本当に貴方を好きなのかどうか。

 考える暇もなく、どんどん話が進んでしまったので。

 専務以上に好きな人は居ない気はしてたけど。

 私、本当に専務を好きなんだろうか。

 流されてるだけなんじゃないかなって、何度も自分で不安にな――」

 そこで、のぞみは、ぎょっとする。

 信雄が物陰から覗いていたからだ。
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