彼の隣で乾杯を
高橋と同室で緊張しているのはどうやら私だけ。
高橋は通常運転。何たる温度差だ。

着替えを手に取り浴室に向かう時に見た高橋はスマホで話をしながらパソコンを開いていた。

有能なビジネスマンなんだよね。
しかも、御曹司。
この会社よりは規模が小さいとはいえ、THコーポレーションといえば大企業だ。

THにはいつ戻るんだろう。
高橋の方から身元を明かさないから、私も知ってるって何となく言い出せなくなっている。

このぬるま湯のような真綿で首を絞められているような生活はいつまで続けられるんだろう。
スイートルームに一緒に泊まる同期って一体どんな関係なんだろう。
この休暇を精一杯楽しむと決めていたけれど、やっぱり気持ちは落ち着かない。


ドアを開けると、アンティーク調の寝室からは想像できないモダンなバスルーム。
てっきりおしゃれだけど使いにくいネコ脚のバスタブが広いバスルームにででんっと鎮座しているのかと思っていた。

かなり大きなバスタブが2つ。
ひとつはジェットバス。
もうひとつには薔薇の花が散らしてある。
シャワーブースには大きなシャワーヘッドの他に天井と三方向の壁に沢山の穴が開いている。そこからもシャワーが出るらしい。

ここは夢の国かお風呂のテーマパークか。

あーあ。
こんなに飲むんじゃなかった。
のんびり薔薇風呂を楽しんでいたら眠ってしまいそうだ。

仕方なく高橋に言われた通りシャワーだけにしようと決めた。
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