彼の隣で乾杯を
「お先にいただきましたー」
濡れた髪を拭きながらリビングに戻ると、高橋は真面目な顔をしてまだパソコンに向かっていた。

「ああ、生きて戻ってきたか」
顔も上げず返事が返ってくる。

「あまりに素敵なバスルームで寝てる場合じゃなかったわ。高橋はゆっくり入ってくれば」

「俺はそんなに風呂にこだわりないから」
そう言って顔を上げて私を見た高橋の顔がギョッとしたように固まる。

「由衣子、その格好」

「あ、これ?すごいでしょ。これも準備されたんだよ。さすがスイートルーム」

脱衣所に置かれていた白いシルクのナイトドレスにナイトガウン。

ナイトドレスはもちろんベビードールのようなものじゃなく、布地多めというかシンプルな膝下丈のワンピース。
さらに足首までかかる丈の長いしっかりとした生地のガウンを羽織っているのだから目のやり場に困るようないやらしさなどは微塵もない。

「せっかくだから着ちゃった。もうこの肌触り最高!紳士用もあったよ。高橋も着てみたら?」

ドレスのスカートを持ってくるくると回るとふわふわとしたガウンがなびいて踊り子のよう。

「あんま回ってるとワインが回るぞ、酔っぱらいのくせに」

「大丈夫だよ、お風呂に入ったら酔いが少し覚めたもの」

「どうだかな。じゃあ俺も入ってくる。由衣子は眠たかったら先に寝てろ」

ひらひらと右手を振って私の顔も見ないでリビングを出て行ってしまった。
なんだそれ、ちょっと感じ悪い。
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