彼の隣で乾杯を
呆れ顔の高橋と予期せぬ展開に動揺する私。

確かに、確かにね、私は高橋のことが好きなんだけど。
本気の恋愛ってこと、それは高橋も私のことを好きだなんて思ってもいいのかな。

酔った頭でうーんと考えていると、
「もういい、酔っぱらいは考えるな」
呆れ声の高橋の声と共に私の後頭部を支えられて唇が塞がれた。

これ、キスだ。

今まで小林主任とのことや仕事のことで落ち込んだ時、ハグしてもらったり、胸を借りて泣いたりすることはあった。でも、こんなキスは初めて。

「何にも考えるな、集中しろよ」一瞬離れた唇はまた塞がれる。

私も高橋の背中に手をまわして応える。
ああ、こんな感覚初めて。
今までも高橋のことが好きだったけど、これからは好きって気持ちを伝えてもイイってこと?
もう隠さなくていい?


「もういいから。お前はこれから俺に溺れていけばいいんだ」

高橋の大きな胸板にぴったりと身体をくっつけてもたれかかる。
信じられないような言葉に頭の回転が追いつかない。

だって、
私たちこのままずっと特別に仲がいい同期なんだって思っていたから。
私の気持ちなんて届かないと思っていたから。
小林主任とのことがあってずっと恋愛と罪の意識がセットになっていたから。
高橋みたいな素敵な男が私のこと女として好きになってくれると思わなかったから。

「高橋・・・」
顔を上げて高橋の目を見つめる。

ああ、近くで見ると透き通るように明るい色の瞳だったんだね。

「好き・・・」

彼の首の後ろに腕をまわして唇を合わせた。
私の背中に太くて大きな腕が回り、私の身体だけでなく心が大きなものに包まれた。
私の求めていた安心感の源が私を包んでいる。
大きくて温かいヒトがそこにいる。

ただ黙ってお互いの唇の温度を確かめるように求め合った。
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