彼の隣で乾杯を
「はあー、気持ちいい!」

「うん、大きいお風呂ってやっぱり最高~」

大浴場に他のお客はおらず、私たちは両手両足を大きく伸ばした。

「温泉旅行に連れて来てくれてありがとう。おまけに運転お疲れさま」

「どういたしまして。こちらこそお付き合いありがとう」

私たちは顔を見合わせてフフッと笑った。

「ここんとこバタバタしていたから癒される~」
早希がはぁーっと大きく息を吐いた。

「そりゃそうでしょ、なんてたって大企業アクロスコーポレーションの副社長との結婚準備とタヌキの飼育係・・おおっと、アクロスの常務の秘書業務だもん。どっちか一つだって大変なのにどっちもやってるんだからね」

どっちも大変なのにねえ。

「常務ね、ホントに面白いヒトでしょ?あれでもかなり有能なんだよね。能ある鷹はーーーってやつ。でも、鷹じゃなくてタヌキなんだけど」

「あはは、確かに見た目も中身もタヌキだわ」

どう見ても鷹に例えてあげられない神田部長の外見にぷっと吹いてしまう。
能あるタヌキは何を隠しているんだろうか?

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