彼の隣で乾杯を
「ああ、もうだから谷口の話は嫌だったんだよ。まだそうと決まったわけじゃないからそんなに泣くな」

またもや私の頬をきゅっと軽くつまんだ。

「いひゃい」と文句を言うと「じゃあ、泣きやめ」と言い返される。

「痛いってば」私の頬をつまんでいる高橋の腕をつかんだら、高橋は私の頬から手を離し反対にぐいっと自分の方にに引き寄せてきた。

きゃっ
そのまま私は高橋の胸に押し付けられ彼の大きな腕にしっかりと閉じ込められた。

ワイシャツを通して高橋の体温を感じる。
あったかいけれど私の胸がドキドキと大きな鼓動を刻み始める。

高橋からはちょっと汗のにおいといつものコロンの香りがする。
どうしよう、心臓がバクバクする。

「あいつを信じてやれよ」

予想外の言葉に身体を硬くする。
信じてやれ?

「居場所がわからなくて心配なのはわかる。でも谷口は心配するなといったんだろ?だったら、信じて待ってやれ。落ち着いたら連絡してくるさ。お前らは関係が切れるような希薄な間柄じゃないだろ?」

とんとんとリズムを刻みように軽く背中をたたかれ徐々に私の心臓も落ち着いてくる。
抵抗せず力を抜いて広いその胸にもたれかかった。

「そうだね」
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