彼の隣で乾杯を

同じフロアにある部長室で私を待っていたのは部長だけではなかった。

笑顔の部長の隣にいたのは・・・小林主任だ。

「佐本さん、待ってたよ。いきなり呼びつけて悪かったね」
固まった私を見た部長は私が緊張していると勘違いして声を出して笑った。
「ハハッ。もしかして、坂口課長から先に聞いてしまって緊張してるのかい?佐本さんなら大丈夫だ。小林主任もいるし、伸び伸びやっておいで」

え?
「どういうことでしょう」

「あれ、まだ聞いてなかった?何だ、てっきり坂口君から聞いたのかと思ったよ」

「いいえ、何も」と首を横に振ると、部長は頷いた。

「社長命令で小林くんをリーダーにした対イタリアの新しいプロジェクトチームを作ることになった。サポートメンバーに選ばれたのは佐本さんだ。いいかい、まずその土台作りから君たちに任せたい。
プロジェクトと同時進行でイタリアに支社を作ることも決まっている。これはかなり大きな仕事だ、わかるよね。でも、君たちなら大丈夫だよ。今まで見てきた私の目は節穴じゃない」

プロジェクト
イタリア?

「待ってください。まだどういうことなのか理解できないんですけど」

「部長、後は私が」
小林主任が部長の前に一歩出た。

「詳しく説明するからこのまま会議室に移動しよう。部長、いいですよね?」

「ああ、小林君、頼んだよ。私から説明するよりいいだろう。佐本さん、来週から動き出せるように今の業務の引継ぎをしておいて」

「引継ぎーー。では今の仕事と兼任できないってことですね」

「まあそういうことになるかな。それも含めて小林君に聞くといい」

視線を笑顔の部長から斜め前に立つ主任に移した。
にこりとしてこちらを見ている主任の心の内など見えるはずもなく、ただざわざわと自分の心にさざ波が立つのを感じる。
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