彼の隣で乾杯を
そして、いつもよりかなり少なくした残業を終えてオフィスを飛び出し帰宅すると、急いで高橋にために料理を作った。そして高橋もいつも帰宅は終電近くだろうに20時を少し過ぎた頃にはやってきた。

「由衣子は大丈夫か?」
箸を止めて私の顔をじっと見てくるから、ドキッとする。

あんまり近くで見ないで欲しい。ここ最近の睡眠不足と食事の偏りで肌荒れしてるし、髪の毛もパサついてるから。
好きな人にそんな姿をみられるのは辛い。
過去には何度かもっと弱ったところを彼に晒しているから今さらなんだけど。

大泣きしてメイクが崩れた顔や泣きはらしてむくんだ顔とか。
ただのすっぴんなんてかわいいもんだと思うほどひどい所を見せている。

「いきなり来て悪かったな。そっちの仕事も大変だって知ってたけど」
珍しく言い淀んでいる高橋に違和感を感じる。

「どうしたの?来るって聞いたから残業切り上げたけど、私の方は心配ないよ。高橋は何かあった?」

「残業大丈夫だったのか?」

「うん、ここんとこ全然会えなかったから私も話したかったし、高橋は?」

「・・・由衣子がイタリア出張になるって聞いてさ」

「ん?耳が早いね。私だって出張の話を聞いたの今朝なのに」

「あのさ・・・」

「何?」

「大丈夫なのかってことだよ。出張の連れは小林主任なんだろ」

知ってたの?
途端に私は高橋の視線を外した。
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