彼の隣で乾杯を
「ね、おかわりする?まだあるよ?」

「サンキュー。じゃあ、頼む」

私は高橋からどんぶりを受け取りおかわりのご飯をよそう。

「で、由衣子のサポートスタッフは決まってるのか?」

「フランス支社の駐在員でイタリア語のできる人がイタリアに来てくれるって。現地に関しては問題なし」

ただ往復の航空機は二人きりだけど。
それでもフランスの駐在員がいれば現地のホテルで二人きりにはならないはずだ。

「そうか。わかった。頑張れよというか頑張りすぎるなよ」
高橋が私の頭をふわりと撫でる。

子ども扱いをされた私は
「うん。ね、時間はまだいいでしょ?飲もうよ」
私は棚から焼酎を取り出した。

私は今夜もずるい女になろうとしている。

酔ってそのまま眠り込む私を置いて高橋が帰ることはないって知っているから、私はわざと酔いつぶれるのだ。

ごめんね。
高橋が私のことを友達以上に思ってないのは知ってる。男女の関係に進まなくてもいいから今は一緒にいて欲しい。
贅沢なこともわがままなこともわかってる。
でも、今だけ、隣にいさせて。

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