ストロベリームーン
1秒にも満たないあの瞬間が、それからの僕の人生の全てを変えた。
あの一点さえなければ彼女との想い出は僕の中で美しく完結した。
僕が人殺しになっても。
ごめんよ。ごめん。どうしてあの時あんなことを思ってしまったのか。
どうしてすぐに返事ができなかったのか。
嘘だ。全て君のせいだ。
なぜ君は僕の美しい想い出通りの少女じゃなかったんだ。
違うよ、違う。君は何も悪くない。
君はただの可哀想な女の子だったんだ。
いや、君は女じゃない。
何言ってるんだ。女の子だ。
僕は、何のために罪を犯したんだろう。
愛のためだったと思いたい。
僕は彼女を愛していたのだと信じたい。
店の外に出るとさっきまで雲に隠れて見えなかった月が出ていた。
大きな茶褐色の月だった。
『ストロベリームーンだ』
彼女が言った。
『好きな人と永遠に一緒にいられるんだって』
孝哉は指輪をそっと撫でた。
「僕は君を愛していたんだよね?ほんとうに。ずっと昔のことすぎて僕にはもう分からなくなってしまった。でもお前なら覚えているだろ」
孝哉は月を見上げた。
了


