ストロベリームーン

 それから毎日家で猫祭りコーヒーを作って飲んだ。

 もちろんアイスはハーゲンダッツだ。

 最初は時間がかかったメレンゲ作りも、今では孝哉よりも泡立てるのが早いのではないかと思うほど上達していた。

 味もアイスが違うせいか店のものより美味しく感じる。

 糖分の摂り過ぎで2週間で1キロ太った。

 隼人は前よりも今の方がいいと言った。





 完璧な猫祭りコーヒーが作れるようになっても、それを披露する時は来なかった。

 小春はあの雨の日を境に、ぱったりと店に来なくなった。

 小春のSNSは随分前から更新されずに止まったままだ。

 小春だけではなく最近は璃々子も姿を見せない。

 あのうさん臭い蓮とか言う男とはどうなったのだろうか。




 忘れもしない強烈な印象のドラッククイーンが店にやって来た。

 ちょうど世那がバイトを上がって、代わりの隼人がカウンターに入った時だった。

 ドラッククイーンはそのパート2みたいなのを連れていた。

 世那は怪獣みたいな2人に臆すことなく近づいた。

 隼人と孝哉が世那に注目しているのが肌から伝わってくる。

「あの、前に小春さんといらっしゃってましたよね」

 パート1は世那の顔をまじまじと見た。

「最近小春さんどうされてますか?」

 パート1の目が少しづつ吊り上がっていく。

「小春なら最近仕事辞めて、どっか旅行に行ったわよ。国内か海外かは知らないけど」

「やっだぁ、小春チンもしかして傷心旅行とかぁ?」

 パート2は頬づえをつき頬を膨らませた。

 全然可愛くない。

「あんた、小春になにしたのよ」

「え?」

 なになに?とパート2が世那とパート1を交互に見る。

「あんた、小春を傷つけたでしょ」

「傷つけたって、わたしはなにも」

 隼人がカウンターから素早く出てくると世那の前に立った。

「いらっしゃいませ、すみません、メニューまだでしたよね」

 2人は隼人を見上げる。


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