もう一度、愛してくれないか
大地は篠原と目が合った。
口の端を緩め、笑顔になる。
切れ長の目にスッと鼻筋の通った端正な顔立ちも、微笑むとそのクールな感じが和らいで少年のようになるのも、父親譲りだ。
……どストライクってわけじゃないが、好みのタイプではあるな。
この秋からアメリカ留学が決まっているが、その前に彼女に声をかけてモノにするか、それとも二年後日本に帰ってから声をかけてモノにするか、思案していた。
……遠距離恋愛はめんどくせぇけど、帰国したときに結婚でもされてたら口惜しいしな。
水島がそんな大地の顔をちらりと見た。
このとき、彼らはこのあとに山中湖一周十三.五キロを延々と走らされることを、まだ知らない。研修担当の本社の社員から「連帯責任」と言われ、女子社員の分まで大地と水島が担わされることも。
さらに、昨年まではまったくなくて、どういうわけかここ一週間で、急遽決まったプログラムだということも。
……彼らはまだ知らない。
⇒⇒⇒「常務の愛娘の『田中さん』を探せ!」
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「もう一度愛してくれないか」〈 完 〉