もう一度、愛してくれないか

寿退社した紗香は、大地を産んでからも転勤先についてきた。だが、さすがに子どもを連れて一年ごとに引っ越しするには限界があった。

大地が幼稚園へ入園する年齢になったのを機に、二人を東京に残しておれだけ単身で赴任することにした。東京だとおれと紗香の実家もあるし、大地と同い年の慶人(けいと)を育てる姉の清香だっている。

『真也さんが東京に戻って来られるように、わたしがここで大地とがんばるっ!』

涙がぷっくりと盛り上がって今にもあふれ出しそうなのに、必死で(こら)えている紗香が、健気でかわいくて愛しくて。

思わず引き寄せて、ぎゅーっと抱きしめたら、紗香はおれの腕の中で子どものようにわんわん泣いた。


二人目の子を……それも女の子を熱望していたのに、とうとう授けてやれなかったのは悪かったと思っている。

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