向日葵
「簡単には辞められないと思う。」


「…そう、なの…?」


「俺も詳しくは知らないけど、うちの社長とは長い付き合いみたいでさ。
龍司さん、あの人の言うことには絶対に逆らわないんだよ。」


「…そんなに怖い人なの?」


「まぁ、危ない人ではあるけどさ。」


そう肩をすくめる智也に、“ふ~ん”としか言えないまま。


こんな話をされると、またクロのことを思い出してしまい、無意識のうちにあたしは、ため息を混じらせてしまうのだが。



「つかぶっちゃけ、夏希は今、龍司さんのことどう思ってんの?」


「…わかん、ない…」


「俺、思うんだけど。
龍司さんってまだ、夏希のこと好きなんじゃね?」


「…えっ…」


智也の言葉の意味がわからず、あたしは思わず視線を泳がせてしまうのだが。



『悪いけど、俺はもう、お前のこと助けるつもりはないから。』


不意にそんな台詞が脳裏をかすめ、唇を噛み締めてみれば、ひどく痛みを放ちながら、鼓動があたしを打ち付けて。



「…適当なこと言わないでよっ…」


吐き出すように絞り出せば、智也はそんなあたしに向けて、ため息を混じらせた。


こんな会話をして、重苦しい空気になりたいわけじゃないのにと、“悪ぃ”と呟く智也から、視線を外した。



「ごめん。
ちょっとあたし、外の空気吸ってくる。」


「おい、夏希!」


引き留める智也を無視し、それだけ言ってあたしは、荷物を持ち上げ、足早に彼の部屋を後にした。


あたしは智也みたいに何でも器用にこなせるわけじゃないし、好きだの嫌いだのなんて話も、全然わかんないのだから。


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