向日葵
とりあえず的に街をフラフラし続け、最終的にあたしは、駅裏にあるバス停のベンチに腰を降ろした。


とっくに最終バスは終わっていて、人の数はまばら。


タクシー乗り場に向かうサラリーマンや酔っ払いの姿くらいしか見受けられず、夜風の肌寒さが、嫌に身に沁みる気がした。


先ほど智也に、“今日は帰らない”とメールを送ったのだが、さてこれからどうしたものかと思ってしまう。








「うっわ~!
バス終わってんじゃん!」


弾かれたように顔を向けてみれば、大学生風の男が、バスの時刻表と腕時計を見比べながら、声を上げて頭を抱えている姿。


恥ずかしい人だなと、そう思っていた刹那、あたしの向けていた視線に気付いたのか男の瞳がこちらを向いた。


その瞬間に視線はぶつかってしまい、あたしは適当にははっと笑うことしか出来ずに居ると、“アンタも最終逃したの?”と、そう問われてしまう始末。



「…まぁ、そんなとこ、かな。」


「何だ、俺と一緒じゃん。
一緒ついでに、俺とホテルでも行く?」


適当に並べた言葉に、彼はおどけたようにそう返してきた。


目を丸くするあたしに、“なんてね”と、そう言って笑う彼の姿に、思わず口元を緩めてしまって。



「良いね、それ。」


「へ?」


「ホテル代、アンタが出してくれるんなら良いよ。」


スクッと立ち上がり、上目がちに男に視線を送ると、彼の驚いたような瞳は、次第に弧を描き始めて。


“出すけど、セックスもアリなんだろ?”と、そんな台詞。


あたしは結局こんな人間で、男なんてものも、みんな同じ。


ニヤリと笑い、男がきびすを返すので、あたしもその後ろに続き、二人、近くのホテル街へと向かった。


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