向日葵
部屋にカレンダーなんてないからあんまり実感はないけど、でも、確かに携帯に記された日付は8月のものに変わっていた。


まるでそれを映し出しているように外は暑くなるばかりで、本気で嫌になるんだけど。


それでもこうやって独りっきりのまま、夏が終わって秋が来て、そして寂しく冬を迎えるのかなって。


時が過ぎて、今より少しだけ強くなれたら、またあたしは、恋が出来るのだろうか。


誰かを好きになって、ぬくもりを求め合ったりすることなんて、あるのだろうか。


前よりは先のことを考えることが出来るようになったけど、でも、その辺を考え始めるとまた、寂しさばかりが募っていくんだ。


クロじゃない誰かと、そんな風になるのかな、って。








「…何で我が家で乾杯?」


あたしの誕生日を3日後に控え、何故だか智也は、我が家にビール持参でやってきた。


明日の夕方から出張で、当日祝えないからとか言ってたけど、単に自分が飲みたいからってだけなんじゃないかと思うと、思わずあたしは眉を寄せてしまう。



「いや、時間も時間だし?」


「乙女の部屋に真夜中に忍び込まないでくれます?」


「真夜中じゃないし、忍び込んでないし。
ついでに言えば、お前は乙女でもないじゃん。」


本当にコイツは、減らず口ばかりで嫌になる。


あからさまに口元を引き攣らせてやると、そんなあたしにお構いなしと言った感じの智也は、コンビニの袋の中からビールを手渡してくれた。


それのプルタブを開けるとプシュッと小気味良い音が響いて、少しばかり夏らしいとか思えてしまうんだけど。



「そんじゃあまぁ、夏希の前途を祝して。」


「祝さなくても良いけど。」


「…いや、最後まで言わせろよ。」


「長いんだよ、アンタのは。」


そんな会話を繰り返し、結局グダグダのまま乾杯をした。


クサいことなんか言われたら、間違って泣いちゃうかもしれないから。


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