向日葵
瞳を開けてみれば、ひどく懐かしい夢を見たなと、そう思った。


この一年半、あたしが辛うじて生きているのは、未だ隣で寝息を立てる陽平のおかげだろうなと、そう思うと、少しばかり笑ってしまう。


体は昨日の痛みを引きずっていて、静かにベッドから抜け出ると、足の裏に感じたフローリングの冷たさに身を縮めた。


外はあの日に似た曇り空で、時計を確認しなければ今が昼なのか夜なのかもわからないほど。


起き抜けに煙草を咥え、ただ煙の行きつく先を見つめながら、今日はとてもじゃないが仕事をする気分にはなれないと思った。







「…夏希?」


ヒタッと聞こえた足音に顔を向けてみれば、いつの間にか起きていた陽平が、欠伸を混じらせて頭を掻いている。


“今って何時?”なんて気の抜けた台詞のまま、彼も同じように隣で煙草を咥えた。



「陽平、仕事じゃないの?」


「いや、休み。」


「そっか。」


「お前は?」


「あたしも、かな。」


「珍しいな。」


「そう?」


そんな会話を交わしてみれば、ひどく穏やかな時間の流れを感じずにはいられなかった。


昨日のことはまだ心の中に燻ったままだけど、でも、その正体を探る気にはなれなかったのだ。


手放したものは大したものではないのだと、そう言い聞かせながらあたしは、珍しく陽平のために食パンを焼いてあげようと思った。


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