向日葵
なのに、庭の木々は秋色に変わり、幾分風が冷たくなったと感じたあの日。


あの日確か、あたしは着替えを取りに帰ったんだっけ。


リビングには夕刻の陽射しが斜めに差し込み、部屋の色はオレンジに染まっていた。


そんな中で誰も居ないことに安堵のため息を吐き出した瞬間、ガチャッと金属の擦れる音が背中から響き、顔を向けてみれば、あの男。



『…何で梶原サンがここに居るの?』


『キミのお母さんが合鍵くれたから。』


チャリッと彼の手の中で、銀色のそれは小さく揺れた。


余計なことをしてくれたなとは思ったのだが、あの母ならばやりかねないだろう。


眉を寄せたあたしをまるで嘲笑うように、梶原は口角だけを上げた。



『邪魔、どいて。』


薄気味悪いなと思って荷物をまとめるために自室に向かおうとその横をかすめた刹那、掴まれたのはあたしの腕。


驚いて目を見開いた時はもう遅く、強い力によってフローリングに押し倒された。


ドンッと音がして、背中にはひんやりとした感覚が張り付き、打ちつけたのか後頭部に、小さく痛みさえも走りながら、恐る恐る目を開けた瞬間。



『…いやっ、やめてっ…!』


本能的に何をされるか感じ、恐怖心の中で上げた声は、梶原の唇によって容易く塞がれた。


塞がれて、そしてスカートの中をまさぐる指先の動きに、嫌悪感さえも覚えて。



『暴れたら殺すぞ。』


その瞬間、生理的な涙が溢れ、歪んだ視界の真ん中で、梶原の薄笑いを見た気がした。


ただ、痛くて怖くて、震えながら唇を噛み締めていた記憶しかない。



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