向日葵
ひどく呼吸が乱れて瞳を開ければ、いつの間にやら眠っていたのだろう。


最悪な夢を見てしまったなと、そんな風に思いながら体を起こせば、額には汗が滲んでいた。


手探りでベッドサイドへと手を伸ばし、落ち着きたくてあたしは、煙草の一本を咥えた。


未だ隣の部屋からはビデオの音が漏れ聞こえ、そんな中で吸い込んだ煙を吐き出せば、悲しくなってる自分が馬鹿馬鹿しくて嫌になる。


梶原にヤられたのだって、元を辿れば二人の所為なのだ。


だからあたしは両親を許さないし、いつか絶対復讐してやるんだと、そう心に決めたんだっけ。


煙草を消し、額の汗を拭ってみれば、今更ながらに喉がカラカラに渇いていることに気付き、ため息を混じらせながらベッドから抜け出た。


ガチャリとリビングへと続く扉を開ければ、引き出しを探っていた陽平の顔がこちらに向いて。



「夏希、起きたんだ。」


「…何やってんの?」


「あぁ、丁度良かった。
ついでだし、お前も飲む?」


そう言って顔の前に掲げられたのは、いつぞやのビタミン剤のパケ。


“最高にブチ上げられんぜ?”と、そう付け加えられたのだが、面倒くさくなってあたしは、きびすを返して冷蔵庫へと向かった。


そんなものに頼ってるから、陽平は頭がおかしくなってるに違いないんだと、そう思った刹那。



「つか、ぶっちゃけると、これってタマなんだよねぇ。」


ククッと笑いの混じる声に、恐る恐る顔を向けた。


向けて、そして震える声で“何、言ってんの?”と、そう問うたのに、彼の顔は一切悪びれてさえいない様子で。



「だからさぁ!
夏希もタマ喰えば、ぶっ飛んだセックス出来んだって!」


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