御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
電車かバスに乗ってどこか遠くへ逃げたいけれど、駅もバス停も、走って向かうには距離がある。

とりあえず人ごみに紛れて姿を隠したいと思うけれど、大通りに出る前に捕まってしまいそうだ。


運動が苦手だから、自分の体力が皆無なのは重々承知だ。それでも、家を出てから約十五分間、必死に走って逃げ回っている。


その甲斐があり、あと数メートルで大通りだーーと思ったその瞬間、先回りしていたらしい追っ手が眼前に立ち塞がる。

慌てて足に急ブレーキを掛け、今走ってきた道を戻ろうと方向転換するけれど、振り返った先にももう一人の追っ手が立っていた。


黒いスーツに、サングラスを掛けた、はたから見たらいかにも怪しい男二人組。でも私にとっては見慣れた顔だ。


「お嬢様、大人しくしてください」

そう言われ、二人の男からそれぞれ片手ずつ掴まれる。

「ちょっと、放してっ」

腕をねじって抵抗してみるけれど、私の力じゃぴくりともしない。

そのままずるずると引きずられるようにして、脇道に停車していた黒いリムジンに押し込まれる。
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