御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~

鏑木がインターホンを押すと、中から【はい】という男の声が機械越しに聞こえる。

結城(ゆうき)家の者ですが、日和(ひより)さんをお連れしました、と鏑木が伝えると、やはり機械越しに【どうぞお入りください】という声が聞こえる。

機械越しだから、何歳くらいの男の声なのかもわからない。

私はこれから会う婚約者とやらの、顔だけでなく年齢も名前すらも知らないのだ。


鏑木がドアノブを回し、玄関の大きな扉がゆっくりと開く。

広い玄関の先には、横に広い廊下が続いており、その先にはリビングらしき部屋が見える。

外観はレンガ調の建物だけれど、中はどちらかというと現代的で多機能そうな雰囲気。シューズクロークは天井につきそうなほどに高いし、そういえば玄関についていたインターホンも高級感があった。


だからって、これからこの家に住みたいとは微塵も思わない。ましてや、顔も名前も知らない男と、なんて。


そうこう思っていると、階段を降りてくる足音が聞こえてくる。
はあ。遂に婚約者とやらとご対面か。


「日和さん。大和田(おおわだ)さんにしっかり挨拶してくださいね」

小宮山のその言葉はしっかりと無視した。
これから現れるのは大和田っていう名前の男なんだ、ふーんって思ったくらいだ。

年齢が一回りもふた回りも離れたオジサンが現れる可能性も大いにありえるな、と思い、眉間に皺を寄せて明らかな不満顔で足音が到着するのをとりあえず待つ。
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