御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
車は三十分ほど走り続け、都心から外れた市に入ると、更に山道へ向かっていく。
そうして到着したのは、広大な敷地の中に建ち、生い茂る木々の隙間から溢れる木漏れ日に包まれた一軒家。
茶色のレンガ造りの建物で、優しい風景にとてもマッチした可愛らしい家だけれど、大きさはなかなか。
都心の一等地に建つ実家ほどの立派な建物ではないけれど、これから〝暮らす〟には、少なくとも広さ的な不自由はないだろう。
山道と言っても奥地ではなく、麓には民家が何件もある為、人里離れた場所にある訳ではないけれど、パッと見渡した限りの視界の範囲に映るのはこの家だけだ。
車が完全に停止すると、小宮山がドアを開け、私の腕を掴みながら降りるように促してくる。
逆側から先に降りた鏑木もこちらへ回ってきて、私が車から降りた瞬間に彼らが再び私の両手を捕まえる。
ここまで来てしまったらもう自力では逃げられないというのに、背の高い二人に挟まれるようにしながら家へ向かわされる。
本当に最悪だ。眼前に建つ家には、会ったこともない私の婚約者ーーとやらがいるらしいのだ。