騎士団長のお気に召すまま
「じゃあまさか、伯爵を納得させるために私を騎士団に入れたのですか?」

「おや、飲み込みが早いですね」


それは肯定に他ならない。

アメリアは溜息を吐いた。

騎士団で働くことはミルフォード家との婚姻を考える条件として提示されたため、あまり深く考えたことはなかったのだが、まさかこんな意図があるとは思わなかった。


「何か言いたそうな顔ですね」

「いや、いいです。もう、いいです」

「もういい、ってどういうことですか」


そんなことを言いあっていると、「そうだ、騎士団長」とヘンディーが呼びかけた。


「アメリア嬢を探しているときに聞こえてきたが、やっぱりどうにも最近のフォルストの動きがおかしいらしい。

我が国の貿易を邪魔しているみたいだって話していたぞ。そのせいで輸入品が入ってこないって。

どうにかならないか?」


「どうにかと言われましても…。フォルストは国王と親交の深い国です。あまり派手なことはできませんよ」


そう言いながら、シアンは口元に手を当てて少し俯いている。

これはシアンが考え事をしているときの仕草だった。

きっと今シアンは頭の中で様々な可能性を考えているのだろう。その冷静で的確な頭脳によって導かれた答えがこの国の未来を、国民の命を左右する。

騎士団はこの国の防衛の要、そう言っていたシアンの言葉の重みがアメリアにもひしひしと伝わってくる。


「…夜会が終わり基地に戻ったら、すぐにレオナルド副団長と協議します。それからすぐに調査に入ります。

この国に害をなすものに容赦はしません」


凛とした声には威厳が満ちていた。

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