騎士団長のお気に召すまま
「申し訳が立たない。しかし私達がその娘をここに連れてきた理由は、傷つけることでも、まして売り飛ばすことでもない。それだけは分かってほしい」

「だったら、何が理由だというのです。この国の貿易を邪魔し、貨物船を近づけさせない。あなた方が主犯だと分かっているのですよ。国王陛下もご存知です」

「ランティスも…」

我が国の国王陛下の名前を聞いたフォルスト王は曇った表情をする。

けれど顔をあげてシアンに懇願するように言うのだ。


「それを説明するために来た。どうか国王陛下への謁見を」


シアンは目を見開いて「何を仰るのです」と睨みつけた。

「この国の民は国外から物資が届かないために貧困の危機にあります。あなたがたフォルストは敵とみなしていますよ。あなたの身の保障はできない」

「それでもいい」とフォルスト王は言い切った。

「何としてでも言わなければならないのだ」

「謁見したとして、何を仰るつもりなのですか」


フォルスト王は黙り込んでしまった。

言わなければならないと分かっているのに、言うのは憚られる。そんな感じがするとアメリアは思った。

拳を強く握って決意したようにフォスルト王は言う。


「今、フォスルトは敵国からの襲来を受けている。

しかしこのままではフォルストの同盟国であるこの国まで被害を受けかねない。

この国とは手を切ったと思わせるために貿易を妨害したのだ。

それを、謝罪したい」


その言葉にシアンもアメリアも、エディまで目を見開いた。フォルスト以外は予想もしなかったことだった。

シアンはその眼光を強くしてフォルスト王に問うた。


「…それは、本当ですか。信じてよいことなのですか」
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