騎士団長のお気に召すまま
絶望するエディを、騎士団員達は確保する。

「我々は下にいますので、何かあれば」

「分かりました」

それからフォルスト一行は部屋から姿を消した。

騎士団員達は確保したエディを護送するために部屋を出てしまったので、取り残されたのはアメリアとシアンの二人だけだった。

気まずい沈黙が鎮座する中、シアンは淡々とアメリアを縛る縄を解いた。

「だ、団長、すみません…」

するとシアンは「まったくですよ」と言って話し始めた。


「どうして貴女は、いつも、いつも!なんでこうも厄介事に巻き込まれるのですか、不幸すぎますよ!一度司祭にでもお祓いしてもらった方がいいのではないですか?」

「ええ、そこまで言います?」

「だったらその巻き込まれ体質をどうにかしてくださいよ。どうしてレオナルドが民家に調査に行った立った一瞬で連れ去れるのです。連絡を聞いたときは驚きましたよ」

「それは、ごもっともです…」


アメリアは反論できずに俯いた。

シアンが解く縄が傷口をかすめてじりじり痛む。

顔を歪めたアメリアに、シアンは「ほんと、何をしているんです」と溜息を吐いた。


「結婚前の貴族令嬢がどうして傷を作るのです。それじゃお嫁にはいけませんよ」


シアンの小言を聞いていると、日常を思い出して安心するのか突然眠気が襲ってきた。


「じゃあ、シアン様がもらってくださいよ」


そんな言葉を吐くのが精いっぱいで、アメリアは瞼を閉じてしまった。


「…さっさと僕のものになればいいのに、なんてね。本当は思っているんですよ」


シアンがそんなことを言ったなど、眠りに落ちたアメリアは知る由もなかった。
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