騎士団長のお気に召すまま
「そうですか」


どっちとも分からない言葉を吐いて、シアンはアメリアに向かって歩を進める。

一歩一歩ゆっくりとした足取りで近づいてくるシアンに、アメリアは緊張して身構える。

しかし何も言わないままのシアンはやがて手の届く距離まで近づいて、おもむろに手を伸ばしてアメリアの頬に触れた。

アメリアは目を見開いた。

頬に触れられた指先がゆっくりと目元の方をなぞる。

その感覚に、心臓が跳ねる。



「まっすぐな瞳ですね」



シアンは冷たい目をしたままじっとアメリアを見つめる。

まるで品定めされているみたいだ、とアメリアは思いながらも見つめ返した。



「あなたの決意の真剣さ、なのでしょうか」



独り言のような言葉を呟いて、シアンはそっと手を離す。



「せいぜい頑張って、とでも言っておきます。

底辺貴族の本気とやらを見せていただきましょう」



その言葉にアメリアは大きく息を吸い込んで、見つめ返した。

恐怖や緊張なんてどこにもなかった。



「ええ、しかとご覧ください」



不敵な笑みを浮かべて、アメリアは笑う。



「底辺貴族の底力を!」


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