騎士団長のお気に召すまま
「…選んだ茶器のセンスは、いいですね」


御空色の美しい縁取りのティーカップには、青色の小さな花が繊細に描かれている。

その印象的な御空色がシアンの瞳の色によく似ていると思って選んだのだ。

まさかシアンに褒められるとは思ってもいなかったアメリアは目を見開いて固まってしまった。

シアンが舌打ちした音でようやく我に返ると、「ありがとうございます」と頭を下げた。

それを見たシアンは「随分と嬉しそうな顔をしますね」と嫌味っぽく言う。


「まずい紅茶しか淹れられないというのに」

「それはこれから努力します」


いつもは腹立つシアンの言葉も、今だけは気にならなかった。

あのシアンから貶されることはあったが、褒められたことは今回が初めて。

ここからだ、とアメリアは思った。

絶望的だと思っていたシアンとの婚約に一歩近づいたのだ。

そんな達成感にも似た気持ちで満ちていたアメリアを、シアンは一瞥するとまた資料に目を落とす。

たった一言で苛立ったり喜んだり、忙しいアメリアに溜め息を吐いて、薄い紅茶を啜った。

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