騎士団長のお気に召すまま
「百聞は一見にしかずと言うでしょう。もちろん他の団員にも命じていますが、自分で見ておかなければ状況を判断できませんから」


溜め息混じりに返答をながら、シアンはキャスケット帽を被る。


「変装ですか」

「この方が紛れやすく調査しやすいのです」


いつもの団服とは違う平民のような格好のシアンは新鮮だったが、貴族たり得る高貴な品位は服装では隠しきれていないとアメリアは思った。


「副団長もお出かけに?」

しかしレオナルドは首を横に振った。


「さすがに団長格が二人も抜けるわけにはいかねェから、俺はここで大人しく留守番さ」

「そうでしたか」と相槌を打ちながら、それもそうだとアメリアは思った。

団長どころか副団長までここからいなくなってしまったら、もしも敵に狙われたときに大変なことになる。

騎士団はこの国の国防の要。いついかなるときも気は抜けない。

そうということは、今日出かけるのはシアンだけ。団長室にシアンがいないのだ、今日は団長室のどこを掃除しようかと考えを巡らせるアメリアに、シアンは言った。


「あなたを呼び出した理由ですが、あなたにも来ていただこうと思いまして」

「え?」

「仮にも貴女は団長室の担当。いつまでも世間知らずのお嬢様では困ります」

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