騎士団長のお気に召すまま
本屋を離れて海辺へ向かいながらアメリアは尋ねる。


「本を購入されたのですね」

「これはまあ、情報料とでもいいますか。有益な情報を提供してくださる、信頼のおける人物ですから、無料で話を聞くわけにはいきませんので」


それを聞いたアメリアは、やはりシアンは真剣な人なんだと思わざるを得なかった。

アクレイド家の堅物とも言われるシアンだが、言い換えれば合理的で真面目な人ということだ。

青藍の騎士として冷徹な面だけを持っているのではない。ちゃんと人の通りを分かっている、人情味もある人物なのだ。

それはアメリアにとっては新たな発見だった。

今日一日シアンと行動を共にして、アメリアは様々なことを知った。

明るく美しい港町の裏にある犯罪を。

犯罪に巻き込まれる恐怖を。

そしてシアンの様々な一面を。


「今日、ここに来られて良かったです」


「ありがとうございます」と頭を下げるアメリアに、シアンは「勉強になったのなら良かったです」と顔を背ける。

素っ気ないシアンの反応がなんだか面白いと思っていると、遠くから「シアン様!」と若い女性の声が聞こえた。

二人が声の聞こえた方に顔を向けると、そこには美しく着飾った若い女性が満面の笑みでシアンに近づいて来る。


「……ミア」


シアンは眉間に皺を寄せた。

それと同時にアメリアと繋いでいた手を離す。

シアンの温度が残る手に外気が触れて少し寂しく感じた。


「シアン様、ご機嫌よう」


ミアと呼ばれた女性は満面の笑みだった。スカートの裾を持って美しく挨拶をする。

年齢はほとんどアメリアと同じのように思える。
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