騎士団長のお気に召すまま
コツリとヒールを響かせて、刺すような冷たい口調でアメリアに問いかけたのは言わずもがなミアだった。

ミアは笑顔を絶やさずその後ろに取り巻きのご令嬢を何人か連れて、鋭い視線をアメリアに向けている。

ダンスを踊り終わってふっと解けた緊張がまた張り詰めてゆく中、アメリアは「いえ、そんなことは」と微笑み返した。


「そうでございますか。ですが少々お疲れのように見えますわ」


心配だと言わんばかりに眉尻を下げるミアのわざとらしい言葉に、アメリアは警戒を強める。

何を言い出すのかと思っていると、ミアは思いついたようにパッと明るい顔をして「そうですわ」と手を合わせた。


「あちらで少し休憩しませんか?」


「え?」


「ご一緒に、どうぞ」


美しい微笑みなのに、目元だけは笑っていない。

どこか不気味な笑顔だと、アメリアは言いようのない恐怖を感じていた。


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