騎士団長のお気に召すまま
「事情はどうあれ、あいつのためにあなたが複雑な事情に巻き込まれているというのは頂けませんね」


ターンを周りながらヘンディーは少し低い声で呟いた。

少し雰囲気が変わったように感じたアメリアは「ヘンディーどの?」と呼びかける。


「何かあればすぐにこのヘンディー・オルレアンにご連絡ください。これでも伯爵家の出。何かお手伝いできるかもしれませんから」


にっこり微笑んだヘンディーは優しさの塊のように思えた。まるで後光が差しているかのような慈悲深さにアメリアは感動した。


「お気遣いありがとうございます、ヘンディーどの」


あの性格悪いシアンにこんなにも心優しい親友がいるなんて。世間は分からないことだらけだ、とアメリアは思った。

曲も終盤に差し掛かり、美しいお辞儀をしてヘンディーと別れたアメリアは壁際で休もうと思った。

踊りの練習は続けてきたとはいえ、こんな緊張する空間で踊るのはどっと疲れる。

シアンは一体どこにいるのだろうか、と会場を見渡していた時だった。



「どなたかをお探しですか?

アメリアどの」


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