【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
この家に来て、積み重ねていくはずだった愛。
けれど
そこには家族の愛なんてものは、そもそも存在していなかった。
「あんたが俺を捨てた日から、俺はあんたの存在が憎くて憎くてしょうがなかったよ」
「ちがっ...!捨てたんじゃないのよ蘭!!
鈴と一緒に蘭も連れていこうとした!!
でも蘭の帰りが遅いから...。
父さんから逃げるには、こうするしかなかったのよ...」
「その父さんの金でこの家を買ったんだろ?」
「ーーーーっ!?」
「知ってるぜ?ぜんぶ。
父さん名義で借金したことも、父さんがもう母さんとは関わりたくないから訴えなかったことも。
俺は全部知ってんだ、あんたがどれだけ欲にまみれた人間かを」
「...」
「俺も連れていこうとした?笑わせんなよ...。
俺に対して少しでも情があるなら
父さんが亡くなったとき、俺を引き取りにくるはずだろ?
でも母さんは来なかった。
俺ってあんたにとってその程度の存在なんだよ」
「...」
「鈴の前に俺が現れたのが怖くなって、俺を引き取る気になったんだろ?
あんたは俺に復讐されるのが怖いだけだ」
ーーーダンっ!!とフォークがテーブルに突き刺さる。
尖ったフォークがテーブルを貫く姿は、蘭君の怒りそのもので。
怯えた目で蘭君を見るお母さん...いや、女の人は
もう完全に蘭君のことを自分の子供として見ていなかった。