「其の花の、真白に咲く」〜麗しの執事と令嬢の秘恋〜
……リュートではない誰かが淹れてくれた紅茶を、渇いた口に含んだ。
だけど、それは少しも美味しいとも感じられなくて、余計に彼の紅茶が、彼自身のことが好ましく思い出されただけだった……。
上の空で会話をしながら、せめて彼は自分の部屋に私宛てに何かを残してはいかなかったんだろうかと、ふと思った。
母とのティータイムを済ませた後で、私室に荷物を入れて、彼の元いた部屋へと向かった。
扉を開けると、そこは既にがらんとしていて、彼は本当にいないんだということを思い知らされた気がした。
本棚と書机しか残されていない部屋を見回して、呆然と立ちすくむ。
かつて、そこにいたはずの彼の姿が思い起こされた……。
窓辺で本を開く横顔、机に向かいペンを走らせる背中、お酒を煽っていた別れ際の表情……そのどれもが愛おしく蘇る。