「其の花の、真白に咲く」〜麗しの執事と令嬢の秘恋〜
「…そんな口のきき方と云うのは?」
「……どうして、わざわざ聞き返すのよ。そんなこと……わかっているのでしょう?」
責めるように言葉を重ねるのに、
「……ジュリア様、いいえ私は何もわかってなどは……」
リュートが視線を外し目を伏せて、静かに首を横に振る。
全てを否定して本心を覆い隠そうともする仕草に、そんな風に彼を追い詰めた自分が悪いようにも感じてくる。
「…いいわ、もう……行きましょう?」
差し出されている手に、自分の手を添える。
彼の横顔をそっと盗み見ると、睫毛の下で青い瞳が僅かに緑がかって、深い陰影を作って煌めいていた。
「……まったく、綺麗すぎるのよ…」
聞こえないように呟いたつもりだったのに、
「……ジュリア様も、とてもお美しいですよ…」
眼差しを向けられて、紅潮する顔を逸らすしかなかった……。