「其の花の、真白に咲く」〜麗しの執事と令嬢の秘恋〜
……やがて、馬車はお屋敷の前に着いて、
「バートリー伯爵家、ご令嬢ジュリア様、お着きにございます」
門弟に招き入れられ、エヴァレット伯爵家の屋敷の中に入る。……と、
「…まぁ! リュート様がご一緒に?」
「リュート様よ!」
私よりも、リュートの方に一斉に関心が集まる。
「……みなさま、ご機嫌よう」
リュートが私の手を取ったままで、胸に片手をあてて頭を下げる。
そのたおやかな佇まいに、女性たちからため息が漏れる。
「……なんて、美しい方……いいわね、バートリー様は。あんなに素敵なお付きのものをお持ちで」
ひそひそと噂をし合う彼女らを、苦い思いで見る。
(……彼は、"もの"なんかじゃないのに……)と、思う。
そんな風にぶしつけに彼を格下呼ばわりする彼女たちが、私には許せなかった。